「花と鉄骨の一輪」|リング|ナオ セガワ
こんばんわ。ナオです。
今回は、2016年7月に制作したリングをご紹介いたします。
T i t l e :「花と鉄骨の一輪」Steel of single flower
Concept:無機質な鉄骨に、もし意思があったなら、実は瑞々しい生命に憧れているかもしれません。
世界は不思議に満ちています。ある夜、鉄骨は静かに一輪の花を咲かせていきます。
無機と有機の融合と対比で、生命の躍動を表現しました。
i n f o : 2016日本ジュエリー展 入選
素材:Silver925
サイズ:100×55×55(mm)
仕上げ:金古美(きんふるび)という伝統的な仕上げをしています。温泉などでよく色が変わるのは硫化で褐色系の灰黒ですが、金古美は紫系の黒色に仕上がります。古美液を散布してから太陽光によく当てます。その昔恩師に伺ったところ、カメラフィルムの感光と同じ原理で黒くなるそうです。
葉側のアングル
真横のアングル
感想:ジュエリーを身に着けるということは、何かしらの対象への変身願望が根底にあります。→呪術起源説
この変身願望という感情を、鉄骨だって持っているかもしれない。無機物だから意思がないなんて、ないがしろにしてはいけません。普段、建築現場に積まれてカクカクしてる彼(彼女)だって有機的な曲線や草花に憧れていて、隙あらば変身してやろうと考えているかもしれない。
と何気なく思ったら、とりあえず作ってみる。これもジュエリーの根底に通ずるものがありそうです。→ホモ・ルーデンス説
私はたぶん何者かが、何者かに変貌を遂げるその過程、瞬間に美しさを感じているのだと思います。
そうした想像の元、「花と鉄骨の一輪」を制作したわけですが、構成としては花の土台は建築資材でよく使用されるH形鋼をイメージしています。断面図がHの形をしています。形鋼の中では代表的な存在で、強度が質量に対して優れた形状をしています。
そこから角線の枝が生えていき、有機的なパーツを生成していくといった構成です。
無機物と有機物が同じ画角に収まることで却って引き立つというのは、花器と生け花の関係性に似ているのかもしれません。
第二弾も作りたいし、身に着けやすいアイテムも展開していけたらなと考えています。
また、このサイズの作品を作ろうとした動機は、プロフィールを意識した結果でございます。元々、Nao Segawaの名義では、まず装着性の高いデイリーで使えるアイテムを最優先で展開していこうと考えていました。作品性の高いアイテムだとアートジュエリーやコンテンポラリージュエリーのジャンルとなり、一般的にイメージするジュエリーと少し毛色が違いますので。
ただ、こういったコンセプト最優先のジュエリーを作るとテンションが単純に上がりますね。ここから装着性の高いアイテムを展開していっても、コンセプトを象徴する作品があるのとないのでは世界観の伝わり方が違います。結果この時期に制作して良かったということになりました。
ご静聴ありがとうございました。
おまけ
生まれたてのH形鋼。板厚0.5でサイズは2.5×2.8(mm)、1.2gです。3枚の板を接合して作ります。ロウ付けという火を使った作業になるのですが、まあ大変です。火を当てると形状上、板が踊るんですよね。もちろん固定はしますが踊るときは踊ります。
彫金机の上で夜な夜なダンシングトゥナイトです。